カンボジアで労働組合が潰されている?!

こんにちは。滝沢です。

今日付けで興味深い日本語記事が配信されていたため、以下紹介します。

 

 

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カンボジア:新型コロナウイルス感染症パンデミック、組合潰しに使われる_厳しい規制、縫製業・観光業の労働者への救済策なし」(Human Rights Watch)

以下転載

(バンコク)- カンボジア政府は、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)パンデミックを利用して、縫製業と観光業の組合活動家を投獄し、組合登録を制限し、争議権(ストライキ権)を封じていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。当局はまた、雇用主がカンボジア国内法と国際法に違反して労働規制を逃れ、不当労働行為を行うことを黙認している。

今回の報告書『残るのは「即席麺」労組だけ:カンボジアの縫製業・観光業での組合つぶし』(全97ページ)は、カンボジア政府と一部の雇用主が、新型コロナウイルス感染症パンデミックの最中に法的・行政的な戦術をさまざまに駆使し、カンボジアの独立系労組運動を弱体化させ、労働権を侵害してきたことを明らかにした。パンデミックによる深刻な経済的影響に対処するために採用された措置は、独立系労組を痛めつける一方で、ある著名な組合幹部の言葉を借りれば「即席麺を作るように」政府に素早く登録できる雇用主寄りの労組を優遇している。

「カンボジア政府と悪質な雇用主は、絶望的に厳しい時期のなかで、労働者の福祉と権利を守るのではなく、新型コロナウイルス感染症パンデミックを口実に、独立系労組にさらなる制限を加えている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのフィル・ロバートソン・アジア局長代理は述べた。「カンボジアの労働権が後退しつつあるなか、欧州連合(EU)、米国など貿易当事国は、みずからの影響力を行使し、労働権の保護義務を果たすよう同国政府への働きかけを強化すべきである。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2022年3月~6月に、縫製業と観光業の独立労組の幹部や組合員、国際労働機関(ILO)の代表など国内外の労働専門家を対象に30件以上のインタビューを行った。ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、カンボジア政府およびこの問題に関係するカンボジア企業に手紙を送り、情報提供を要請したが、回答を寄せたのは1つの工場だけだった。

2020年初頭の新型コロナウイルス感染症パンデミック発生当初から、カンボジア政府は独立系労組への弾圧を強化し、権利侵害にあたる法律と新しい公衆衛生対策を使って、労組への不当な制限を正当化した。カンボジアの労働組合法は問題が多く、組合の登録、団体交渉の実施、争議権の行使に対し、強制的で負担の大きい要件を課している。多くの雇用主が労働者削減策(景気後退を理由に正当化される大量解雇措置)を利用して、労組幹部や活動家を解雇している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、縫製業と観光業で、労組幹部と活動家を標的とした不当解雇や大量解雇の事例のうち5つを明らかにした。こうした事例は、カンボジアの労使関係史につきまとう組合つぶしという長年の問題を典型的に示すものだ。

たとえば、2021年4月、プノンペンのカジノ「ナガワールド」は1,329人の労働者を解雇した。当局は、進行中のストライキを恣意的に違法とし、ソーシャル・ディスタンスなどの新型コロナウイルス感染症対策を口実として、スト労働者を排除し、検査のためとして一時的に拘束した。

「私たちが(ナガワールド・カジノでの)ストライキに入ると、突然、偽の新しい組合が現れた。私たちはこれを『即席麺』組合と名づけた。2分でできる即席麺のように素早く(労働・職業訓練)省に登録されたからだ」と、クメール労働者労働権支援組合(LRSU)のチム・シター委員長は述べた。「ナガワールドの労働者は、組合選挙が行われたことも、誰が指導者に投票したのかも知らない。」

シター委員長は、解雇された365人の労働者の復職とナガワールド・カジノからの公正な補償を求めたストライキで「重大犯罪を扇動した」罪で起訴された。氏は74日にわたり公判前勾留された。すでに保釈されているが起訴はまだ続いている。

カンボジア企業は、有期雇用契約を乱用し続け、労働者の組織化を阻止し、法的に定められた退職金の支払いを避けようとしてきた。雇用主は、理由も告げず通知もなしに有期雇用契約を何度となく打ち切り、組合活動への対応策として、組合幹部や活動家を狙って解雇する。労働職業訓練省は、法律で定められた2年の制限を超えて有期雇用契約を延長することを認める通知を発布した。しかし、これはカンボジア労働法に明らかに違反するものだ。労使紛争解決の一環として労働法の権威ある解釈を示す仲裁評議会では、同省に不利な裁定を下すことを拒むことが増えている。

独立した仲裁評議会が当てにならないため、独立系労組側は司法と法的救済を有効に利用することができないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

2020年8月、欧州委員会は、カンボジア政府が市民権・政治権および労働権の組織的侵害を行ったとの調査結果に基づき、カンボジアに対する「武器以外すべて」(EBA)の特恵関税制度を一部停止した。米国通商代表部は現在、一般特恵関税制度全体のレビューを行っており、これによりカンボジアを含むすべての対象者について、米国市場への無関税アクセスが停止された。

「カンボジアの独立労組と組合員は、自分たちが被った労働権の侵害行為に対して、効果的で時宜を得た救済策に与れないでいる」と、前出のロバートソン局長代理は述べた。「貿易相手国、カンボジアから調達を行う国際的な衣料品ブランド、ILOは協力して、労働者の権利を守るような効果的な紛争解決メカニズムの創設をカンボジア政府に迫るべきである。」(転載終了)

 

 

新型コロナウイルスの感染防止を大義名分にした、自国民への行動制限は、どこの国でも行われており、例えば日本でも集会の規制が行われたり、香港では、高まる民主化の波(反送中運動)を「ロックダウン」で強制的に抑え込んだりしてきた。また、欧米でもその動きは同様である。当然、権威主義体制の続くカンボジアでも、同様の動きが行われたことは想像に難くない。この記事を読んで、あるカンボジア人が以前、「母国は北朝鮮のような状態ですから」とあきらめに似た表情で言っていたことを思い出した。

「人命」を利用する権力のこのような動きに対しては、国際社会が協力して、対話による問題解決と共に、経済制裁によって、「自由と民主主義を尊重しなければ損をする」と思わせなければならないだろう。権威主義国家であるロシアのウクライナ侵略や中国の海洋進出、これに対抗しようとする西側諸国の全体主義への傾斜に対し、もう一度リベラリズムの復権が求められていると思う。

 

参考文献

カンボジアの民主主義は死んだのか?」2018年5月8日「SYNODOS」掲載 著者:米倉雪子(昭和女子大学准教授)

 

筆者:滝沢(泷泽)

名古屋市在住

趣味:飲酒、喫煙、シーシャ、中国語の勉強

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